結婚・離婚のお金と手続き まとめ

財産分与・結婚前の財産・慰謝料・費用・離婚率・親権・養育費 ― 2026年の新ルール対応

離婚のときにかかわる「お金」と「手続き」、そして子どものことを、ひととおり整理した資料です。

一般的な情報のまとめであり、法律・税務の助言ではありません。実際の判断は、弁護士・自治体の無料法律相談・法テラスなどに相談してください。2026年4月1日に大きな法改正(共同親権・法定養育費・財産分与の請求期間の延長)があった点に注意してください。

1 離婚の種類と離婚率 ― データで見る

離婚には大きく分けて協議・調停・裁判の方法があり、9割近くは話し合い(協議離婚)で成立している。

方法内容費用の目安割合(2024年)
協議離婚夫婦の話し合いで合意し、離婚届を役所に出す(証人2名が必要)ほぼ0円(届出のみ)。公正証書を作るなら数万円約88%
調停離婚家庭裁判所で調停委員を介して話し合う収入印紙1,200円+郵便切手(弁護士を頼めば別途)約9%
審判・裁判離婚調停が不成立のとき、裁判所が判断する(訴訟)印紙代+弁護士費用(数十万円〜)数%

■ 数字で見る離婚(2024年・人口動態統計)

確かな情報
指標数値メモ
婚姻件数485,092件2024年
離婚件数185,904件2024年
離婚数 ÷ 婚姻数約38%いわゆる「3組に1組が離婚」の由来
粗離婚率(人口千対)1.50人口1,000人あたりの年間離婚件数
協議離婚の割合約87.5%約9割が話し合いで成立
最も多い年齢層夫婦とも30〜34歳別居時の年齢別
「3組に1組」の正しい読み方

この数字は同じ年の「婚姻件数」と「離婚件数」を比べただけで、「いま結婚している夫婦の3組に1組がいずれ離婚する」という意味ではない。結婚した年と離婚した年が違うカップルを単純比較しているため、実際の"生涯離婚率"とは別物。不安をあおる使われ方をしがちなので、数字の意味を正しく理解しておきたい。

2 夫婦の財産はどう分ける? ― 財産分与

離婚するとき、結婚してから夫婦が協力して築いた財産を分け合うのが「財産分与」(民法768条)。これは慰謝料とは別物で、どちらか一方が悪くなくても(性格の不一致でも)請求できる。

■ 原則は「2分の1ルール」

確かな情報

財産分与の割合は、収入の差や共働き・専業を問わず原則として半分ずつ(2分の1)専業主婦(主夫)でも、家事・育児で家計を支えた貢献が認められ、原則2分の1になる。預貯金や不動産が誰の名義かは関係なく、"夫婦が協力して築いたか"で判断する。

■ 分ける財産・分けない財産

条件つき
分与の対象になる(共有財産)対象にならない(特有財産)
婚姻中に貯めた預貯金結婚前から持っていた預貯金・財産
婚姻中に買った家・土地・車・家財婚姻中でも相続・贈与で得た財産
退職金(婚姻期間に対応する分)・保険の解約返戻金独身時代に貯めたお金で買ったもの
有価証券・積立・へそくり(原資が婚姻中の収入なら)別居後に築いた財産
住宅ローンなどの負債(プラス財産から差し引く)一方の個人的な浪費・借金
退職金・住宅ローン・借金はどうなる?

退職金は、婚姻期間に対応する部分が分与の対象になりうる(受給が確実な場合)。住宅ローンが残る家は、時価からローン残高を引いた「純資産」で考える。売る(財産を分ける)か、どちらかが住み続けてローンを引き継ぐかで扱いが変わり、オーバーローン(残債が時価より多い)だと分ける財産がないことも。生活のための借金は財産から差し引くが、ギャンブル等の個人的な借金は対象外が原則。

請求期限が「2年→5年」に延長(2026年4月〜)

財産分与を請求できる期間は、これまで離婚から2年だったが、2026年4月の民法改正で「離婚から5年」に延長された。とはいえ、時間がたつほど財産の把握・立証は難しくなるので、離婚前〜離婚時にきちんと取り決めておくのが基本。

■ 財産分与の3つの性格

条件つき
  • 清算的財産分与:夫婦の共有財産を清算する。財産分与の中心。
  • 扶養的財産分与:離婚で生活に困る側を補助する意味合い(専業主婦が高齢・病気などのケース)。
  • 慰謝料的財産分与:慰謝料を財産分与に含めて渡すこともある(本来は別物)。

3 結婚前の財産・相続した財産はどうなる? ― 特有財産

結論から言うと、結婚前から自分が持っていた財産(特有財産)は、離婚時に分ける必要はない。婚姻中に得たものでも、相続や贈与で受け取った財産は同じく特有財産で、財産分与の対象外。

  • 結婚前の預貯金:独身時代に貯めたお金は自分のもの。
  • 結婚前に買った不動産・車:原則そのまま自分のもの(婚姻中にローンを夫婦の収入で払った分は考慮されることがある)。
  • 親からの相続・生前贈与:婚姻中に受け取っても、夫婦で築いたものではないので対象外。
  • 独身時代のお金で結婚後に買ったもの:原資が特有財産なら特有財産のまま。
注意 ― 「混ざる」と特有財産だと認められにくい

結婚前の貯金を、婚姻中の生活費や共有の口座と同じ口座で混ぜて使うと、どこまでが「結婚前の自分のお金」か分からなくなり、特有財産だと立証できず、共有財産として分けられてしまうことがある。結婚前の預貯金は別口座のまま動かさない・残高の記録を残すと、後で証明しやすい。

婚前契約(夫婦財産契約)という方法もある

結婚前に「どの財産を各自のものにするか」を取り決める夫婦財産契約(いわゆる婚前契約)という制度もある。婚姻届の前に登記すれば第三者にも主張できるが、日本ではあまり使われていない。再婚・事業経営・資産が多いなどの事情がある人が検討することがある。

4 年金分割 ― 婚姻中の厚生年金を分ける

会社員・公務員だった期間がある夫婦は、婚姻期間中の厚生年金(報酬比例部分)の記録を分割できる。これにより、将来受け取る年金額を夫婦間で公平にならす制度。

種類内容ポイント
合意分割婚姻期間中の厚生年金記録を、夫婦の合意(または裁判所)で分ける分割割合は上限2分の1。原則離婚から2年以内に請求
3号分割専業主婦(夫)=第3号被保険者だった期間の記録を分割2008年4月以降の期間が対象。相手の合意なしに請求すれば2分の1
年金分割で誤解しやすいこと

分けられるのは厚生年金(報酬比例部分)の"記録"だけ。国民年金(基礎年金)や、相手が自営業で国民年金のみの場合は対象にならない。また「相手の年金の半分がもらえる」わけではなく、婚姻期間に応じた記録を分ける仕組み。請求期限(原則2年)が短いので、離婚時に忘れず手続きを。

5 慰謝料 ― もらえる場合と相場

慰謝料は、相手の悪い行い(有責行為)で精神的な苦痛を受けたときに請求できるお金。財産分与とは別物で、「性格の不一致」など、どちらが悪いとも言えない離婚では基本的に発生しない

■ 慰謝料が発生しやすいケースと相場

条件つき
原因相場の目安メモ
不貞行為(浮気・不倫)50万〜300万円婚姻期間の長さ・子の有無・回数・悪質さで増減。不倫相手にも請求できる
DV・モラハラ50万〜300万円程度程度・期間・診断書などの証拠による
悪意の遺棄(生活費を渡さず放置・一方的な別居)数十万〜200万円程度状況による
性格の不一致・価値観の違い原則なしどちらかが一方的に悪いわけではないため
慰謝料は「証拠」と「時効」がカギ

慰謝料を請求するには、不貞やDVがあったという証拠(写真・メッセージ・診断書・記録など)が重要。また慰謝料の請求には時効があり、不貞などを知ってから原則3年(離婚そのものへの慰謝料は離婚成立から3年)で請求できなくなる点に注意。

6 離婚にかかる費用 ― 別居中の生活費も

離婚そのものにかかる費用は、方法によって大きく違う。話し合い(協議)でまとまれば、費用はほとんどかからない。

  • 協議離婚:離婚届を出すだけなら費用ほぼ0円。ただし取り決めを公正証書にすると数万円(養育費の不払いに備えて作る人が多い)。
  • 調停:家庭裁判所に納める収入印紙1,200円+郵便切手。自分で進めれば弁護士費用は不要。
  • 裁判:印紙代に加え、弁護士費用(着手金・報酬金で合計数十万〜100万円超)がかかることが多い。
弁護士費用が不安なときは「法テラス」

収入が一定以下なら、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助で、無料の法律相談弁護士費用の立替・分割払いが利用できる。まずは自治体の無料法律相談とあわせて検討を。

別居中の生活費 ―「婚姻費用(婚費)」

離婚が成立するまでの別居期間中は、収入の多い側が少ない側に生活費(婚姻費用)を分担する義務がある。金額は裁判所の婚姻費用算定表(双方の年収・子の人数と年齢で決まる)が目安。相手が払わないときは家庭裁判所に婚姻費用分担請求の調停を申し立てられる。

7 子どものこと ― 親権・養育費・面会交流

子どもがいる場合、離婚で最も大切なのが子どもの生活。2026年4月の民法改正で「共同親権」と「法定養育費」が導入され、大きく変わったので、新ルールを中心に整理する。

■ 親権 ―【2026年4月〜】共同親権が選べるようになった

確かな情報

これまで日本では、離婚後の親権は父母どちらか一方の「単独親権」だけだった(母親が親権者になる割合が約8〜9割)。2026年4月1日施行の改正民法で、離婚後も父母の双方が親権を持つ「共同親権」を選べるようになった

  • 父母の協議で「共同親権」か「単独親権」かを決める。合意できなければ家庭裁判所が子の利益の観点から判断する。
  • DV・虐待のおそれがある場合などは、単独親権になる(無理に共同にはしない)。
  • 施行前(2026年3月以前)に離婚した人も、親権者変更の申立てで共同親権に変更できる場合がある。
  • 「親権」と、実際に子と暮らして世話をする「監護権」は分けて考えることもある。

■ 養育費 ―【2026年4月〜】取り決めがなくても「法定養育費」

確かな情報

養育費は、子どもと離れて暮らす親が、子の生活・教育のために支払うお金。金額は裁判所の養育費算定表(支払う側・受け取る側の年収、子の人数・年齢で決まる)が目安になる。

新設された「法定養育費」制度

取り決めをしないまま離婚するケースで養育費が支払われない問題に対応するため、2026年4月1日から「法定養育費」制度が始まった。取り決めがなくても、法律上当然に、子1人あたり月2万円程度(子が2人なら月4万円…と人数倍)を請求できる。ただしこれは正式な金額が決まるまでの暫定的・補充的な額で、本来はきちんと算定表に基づいて取り決めるのが望ましい。不払いに備え、支払いを確保しやすくする仕組み(先取特権など)も整えられた。

■ 面会交流

条件つき

子どもが、離れて暮らす親と定期的に会う「面会交流」も、離婚時に取り決める。頻度・方法は、あくまで子どもの福祉(子の利益)を最優先に決めるのが原則。養育費と面会交流は、どちらも親の都合ではなく子どものための権利という考え方が基本。

子どもの戸籍・名字(氏)

離婚しても、子どもの名字(氏)と戸籍は自動では変わらない。母(親権者)が旧姓に戻り、子も同じ姓にしたい場合は、家庭裁判所で「子の氏の変更許可」を得て、入籍届を出す必要がある。また離婚した人自身は、離婚から3か月以内に届け出れば、結婚時の姓を名乗り続ける(婚氏続称)こともできる。

8 ひとり親への支援・手当

離婚後にひとり親になったときは、公的な手当や支援がいくつもある。所得制限などの条件があるので、まずは市区町村の窓口で確認を。

制度内容
児童扶養手当ひとり親家庭などに支給。所得により月額が変わる(全部支給・一部支給。所得制限あり)
ひとり親家庭等医療費助成親と子の医療費の自己負担を軽減(自治体により内容が異なる)
児童手当ひとり親に限らず、子育て世帯に支給される国の手当
就学援助学用品費・給食費など、義務教育にかかる費用を補助
母子父子寡婦福祉資金貸付生活・就学・就業などのための無利子・低利の貸付
就労支援・給付金資格取得(高等職業訓練促進給付金など)や就職を支援
養育費の確保を後押しする自治体の支援

養育費が支払われないケースが多いことから、養育費の取り決めを公正証書にする費用の補助や、保証会社と契約する費用の補助を行う自治体が増えている。2026年4月からの法定養育費・不払い対策とあわせて、住んでいる自治体の制度も確認しておきたい。

9 離婚の進め方 ― チェックリスト

あわてて離婚届を出す前に、お金と子どものことを取り決めておくと、後のトラブルを大きく減らせる。

▶ ① 離婚を決める前・別居する前に

  • 夫婦の財産を把握する:預貯金・不動産・保険・年金・借金の一覧を作る(通帳・残高のコピー)。
  • 証拠を集める:不貞・DVなど慰謝料にかかわる事情があれば、記録・写真・診断書などを確保。
  • 収入・生活費の見通し:別居後・離婚後の生活費、住まい、仕事を具体的に考える。

▶ ② 離婚の条件を取り決める

  • 財産分与・年金分割・慰謝料の金額と方法。
  • 子ども:親権(単独/共同)・養育費(金額・支払方法・いつまで)・面会交流。
  • 取り決めは「公正証書」に:とくに養育費など継続的な支払いは、公正証書にしておくと不払い時に差押えがしやすい。

▶ ③ 離婚の届出と、その後の手続き

  • 離婚届を役所に提出(協議離婚は証人2名が必要)。
  • 各種の名義変更・切替:健康保険、年金、住民票・世帯主、銀行口座、運転免許、各種契約など。
  • 名字・戸籍:旧姓に戻すか(婚氏続称は3か月以内)、子の氏の変更(家裁の許可)を検討。
  • ひとり親の手当:児童扶養手当などを申請。
迷ったら、まず「無料相談」から

離婚は、お金・子ども・感情がからむため、一人で抱え込みやすい。自治体の無料法律相談・法テラス・弁護士の初回相談などを使えば、費用をかけずに全体像を整理できる。早い段階で見通しを立てておくと、精神的にも金銭的にも負担を減らせる。

10 参考にした情報源

この資料の作成にあたって参照した主な公的機関・統計・解説です。制度は改正されることがあるため、最新の情報は各機関でご確認ください。

  • 厚生労働省「人口動態統計」(2024年):婚姻件数・離婚件数・離婚率(人口千対)・離婚の種類別割合・年齢別の傾向。
  • 法務省「民法等の一部を改正する法律(令和6年改正)」:離婚後の共同親権、法定養育費、財産分与の請求期間の見直し(2026年4月1日施行)。
  • こども家庭庁「ひとり親家庭のためのポータルサイト」:民法改正(共同親権・法定養育費)と、ひとり親向けの支援制度の解説。
  • 日本年金機構:離婚時の年金分割(合意分割・3号分割)の仕組みと請求手続き。
  • 裁判所(家庭裁判所):養育費・婚姻費用の算定表、離婚調停の手続きと費用(収入印紙・郵便切手)。
  • 日本司法支援センター(法テラス):民事法律扶助(無料法律相談・弁護士費用の立替)の案内。
  • 民法768条(財産分与)・770条(裁判上の離婚原因)など、家族法に関する各弁護士事務所・自治体の解説。
免責

本資料は一般的な情報提供を目的とした個人的なまとめであり、法律・税務上の助言ではありません。制度・金額・統計は改正や年によって変わります。個別の離婚・財産分与・親権・養育費などの判断は、必ず弁護士・自治体の相談窓口・関係機関にご相談ください。

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