不動産小口化商品の検討メモ

FPG・4,000万円分を親から子へ贈与する場合

このメモの前提

贈与日:2026年9月30日/購入額:4,000万円/暦年課税。相続時精算課税は使わない。贈与年の1月1日時点で18歳以上の子・同年の他の贈与なしを想定。親から成人の子への特例税率で計算(これも暦年課税)。

対象:FPGの不動産小口化商品(信託受益権型)。個別物件の契約書・評価明細は未確認。4,000万円は購入額で、贈与税の評価額とは別。制度・出典の確認日:2026年9月26日。

1 今年と来年以降 ― 贈与税はいくら?

今年の税額は評価明細がないと確定できない。まず評価額別に比較。来年以降は時価に近い評価へ見直す通達案があり、同じ商品でも税額が増える可能性がある。

贈与時期税務上の評価額(仮定)贈与税
今年:2026年12月31日まで8,000,000円1,170,000円
今年10,000,000円1,770,000円
今年12,000,000円2,460,000円
来年以降:2027年1月1日から(通達案)36,000,000円13,300,000円
来年以降38,000,000円14,300,000円
来年以降40,000,000円15,300,000円
中心例:今年の評価1,000万円 → 来年の評価3,800万円

贈与税 1,770,000円 → 14,300,000円。差は12,530,000円。どちらの評価額も仮定で、今年の低い評価が認められる保証はない。

税額=(評価額−年間110万円)×特例税率−速算控除。18歳未満など特例税率の対象外なら別計算。例:評価4,000万円の一般税率は17,390,000円。国税庁:贈与税率。

2026年中なら低い評価が必ず認められる、という保証ではない。来年の36・38百万円も、購入額に90%・95%を掛ければ必ず使える評価額ではない。詳しい評価方法と通達案の条件。

2 今年の評価を否認されたら ― 追加でいくら?

評価額を4,000万円へ更正された場合の比較。更正後の本税は15,300,000円。既に払った贈与税は差し引き、追加の本税・加算税・延滞税を払う。

当初の評価額申告済みの税額追加の本税過少申告加算税の例追加で払う小計
8,000,000円1,170,000円14,130,000円2,061,000円16,191,000円
10,000,000円1,770,000円13,530,000円1,941,000円15,471,000円
12,000,000円2,460,000円12,840,000円1,803,000円14,643,000円
中心例:評価1,000万円で申告 → 4,000万円へ更正

追加負担:15,471,000円+延滞税
当初の1,770,000円も含めた累計負担は17,241,000円+延滞税。4,000万円への更正が必ず起きるという予測ではなく、納税資金の準備例。

期限内申告後、税務調査による通常の更正等を想定。加算税は追加の本税×10%+「追加の本税−申告済み税額と50万円の大きい方」のプラス部分×5%。中心例:13,530,000円×10%+(13,530,000円−1,770,000円)×5%=1,941,000円。

延滞税は固定額にできない。対象年の利率・納付日・計算期間の除外等で変わる。自主修正の時期、正当な理由、無申告・隠蔽等、反復や一定の記帳不備等でも加算税が変わる。評価否認だけで重加算税が必ず付くわけではない。

出典:国税庁 加算税/延滞税。

3 売却はいつ以降を目安にする?

通常の更正期間が過ぎる目安:2033年3月16日以降

2026年9月30日の贈与 → 2027年3月15日の申告期限 → 原則6年 → 2033年3月16日以降。更正期間を考慮してから売却を検討するなら、この日が条件付きの目安。否認されないことを保証する売却日ではない。

時点意味
2026年9月30日贈与日。贈与から6年を数えるわけではない。
2027年3月15日通常の法定申告期限。早く申告しても起点は変わらない。
2033年3月15日まで原則6年の更正・決定ができる期間。
2034年3月15日まで偽りその他不正の行為により税額を免れた場合等は7年。単なる評価否認だけで必ず7年になるわけではない。

前提:期限延長・期間制限の特例がなく、不正行為に該当せず、期間内の更正等もない場合。これは課税処分の期間制限(除斥期間)で、税の徴収の時効とは別。期間内に処分された税金の納付義務が、この日で消えるわけではない。

何年持てば否認されない、というルールはない

評価は贈与日の状況で判断。長く保有しても、当初の不適切な評価が正しくなるわけではない。贈与時点の売却の合意・交渉や価格情報も含め、評価の根拠を税理士に確認・保存する。売却自体が否認の唯一の条件でもない。

FPG商品の譲渡承諾・買い手・手数料は個別契約で確認。2033年に希望価格で売れる保証はない。その間の価格下落・分配金・費用も比較。暦年贈与でも親の相続時に贈与財産が加算される場合があり、贈与税の更正期間とは別。国税庁:相続時の贈与加算。

期間制限の出典:国税庁:相続税法の基礎・贈与税の期間制限(相続税法37条)/国税通則法71条・期間制限の特例。

4 理由・詳細 ― 評価方法と申告

▶ 今年と来年で変わるのは、主に税率ではなく評価額

時期評価の考え方
2026年中路線価・固定資産税評価額、貸家・貸家建付地等の従来の方法を基本に、贈与日の物件・権利を評価。ただし総則6項による別の評価の可能性がある。
2027年以降(通達案)小口化商品は購入時期にかかわらず、通常の取引価額(時価)を基本に評価する案。

2026年9月18日公表の通達案。10月4日時点でも意見募集中(10月18日17時まで)で、最終確定ではない。FPGも2027年以降の評価見直しと、改正前を含む税務の不確実性を注意喚起。

▶ 90%・95%の税額例は、どんな条件?

  • 適正な価格情報に基づく元本等相当額について、事業開始から5年超なら原則90%。5年以内なら地価変動・建物の減価等を反映した修正額の95%。買ってから何年かではなく、事業開始時期で区分。適正な意見価格・一定の鑑定評価額との比較規定もある。
  • 90%・95%は購入代金全体に自由に掛ける割合ではない。1章の36・38百万円は、評価対象の基になる額が4,000万円で、別途加算する現金等がない仮定。土地・建物・準備金等の内訳により結果は変わる。
  • 一般の貸付用不動産の80%評価とは別。実行時点の最終通達と物件資料で確認。

出典:国税庁:通達案・意見募集/通達案本文・2 小口化商品の評価/FPG:評価見直しの注意事項。

▶ 申告・支払いで注意すること

  • 今年の贈与:原則2027年2月1日〜3月15日に申告・納税。2027年の贈与は原則2028年2月1日〜3月15日。今年の贈与を翌年に申告しても、それだけで新評価へ切り替わるわけではない。
  • 9月30日は予定日だけでなく、信託受益権の移転・承諾等を踏まえた実際の取得日を確認。
  • 110万円控除は受贈者1人の年間合計に対して1回。親や口数ごとではない。税金を親が別途負担すると、その負担も原則として贈与に含まれる。
  • 保有しているだけで贈与税が毎年かかるわけではない。分配金・売却益の税金は別。

出典:国税庁 贈与税がかかる場合。

5 過去に評価が否認された事例

▶ 最高裁2022年4月19日判決 ― 借入れで購入した賃貸不動産

流れ実際の事案
購入・借入れ2009年に2物件を合計13億8,700万円で購入。銀行等から資金を借り入れた。
相続・申告2012年の相続で、2物件を通達に基づき合計約3億3,371万円と評価。借入金等も差し引き、相続税0円として申告。
税務署の更正鑑定評価合計12億7,300万円を使用。相続税の総額を240,498,600円に更正し、過少申告加算税も賦課。
裁判の結論最高裁は更正を適法と判断。評価差だけでなく、相続税を大幅に減らす購入・借入れの経緯と税負担の公平を検討。
この計画への示唆

通達の計算に合っていても、個別事情によって別の合理的な評価が使われる場合がある。一方、評価差が大きいだけで自動的に否認されるわけではない。この小口化商品の贈与を直接判断した判決ではない。FPG商品の否認確率や安全な保有年数へは置き換えられない。

出典:最高裁判決原文(冒頭4ページ)/財産評価基本通達・総則6項。

6 保有中・売却時の税金と商品のリスク

▶ 保有中:分配金は不動産所得

現金の分配額=課税所得ではない。収入・経費・減価償却を信託の収支資料で確認。税率は本人の他の所得・控除により変わる。個人事業税や国保等への影響も確認。信託受益権の不動産所得の赤字は給与等と損益通算できない。

▶ 売却時:親の取得費・取得時期を引き継ぐ

  • 贈与時の低い評価額ではなく親の取得費を引き継ぐ。建物の減価償却分は差し引く。準備金等の内訳を確認し、出資額全額を不動産の取得費にしない。贈与税は取得費に加算できない。
  • 売却年の1月1日時点で、親の取得から5年を超えるかで判定。長期は20.315%、短期は39.63%(2026年の税率)。贈与から数え直さない。
  • 親が2026年中に取得した場合の例:2032年1月1日以降の売却が長期譲渡。これは売却益の税率の区切りであり、贈与評価の否認を防ぐ日ではない。将来の税率は売却時に再確認。
買値と同額で売っても税金が出る例

取得費の元額4,000万円−減価償却累計400万円=残る取得費3,600万円。
売却4,000万円−取得費3,600万円−譲渡費用100万円=譲渡益300万円。
特別控除等なし・長期譲渡の税額例:609,450円。

出典:国税庁 贈与した不動産の取得費・時期/建物の減価償却/長期譲渡/短期譲渡。

▶ 税金以外も含めた損益で判断

持つのは不動産の登記名義ではなく信託受益権。信託財産は受託者の固有財産から独立するが、元本・分配金・換金を保証する仕組みではない。空室・修繕・価格下落・運営関係者の信用・売却の遅れが残る。

親子合計の税引後損益

税引後分配金の合計+売却手取り−購入時の総支出−贈与税等−手続費用。既に手取りから差し引いた税・費用は二重に引かない。

出典:FPG:FAQ・費用・リスク/信託協会:信託財産の独立性。

7 9月30日の贈与時点で確認・保存する資料

相手確認・保存するもの
FPG・販売会社個別物件の評価明細、土地・建物・準備金等の内訳、事業開始日、最新の鑑定・価格情報、贈与手続・譲渡承諾・売却費用。
資産税に詳しい税理士9月30日時点の評価、総則6項のリスク、購入・贈与・売却予定を含む経緯、否認時の追加負担、更正期間の例外。
親子で用意親の取得日・取得費、同年の他の贈与、当初と否認時の納税資金、親の相続時の加算、贈与契約・実際の移転日を示す記録。
税額を確定するために必要なもの

まず4,000万円分の贈与税評価明細を入手。その評価が妥当かを税理士に確認してから、申告税額と売却候補日を決める。低い評価額・長期保有・更正期間の経過を、税務全体の安全保証にしない。

個人用の検討メモ。数値は仮定の試算。契約・贈与・売却の前に、最新制度と個別資料に基づき専門家へ確認。

▲ このページの先頭へ